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第217話 ただ、側にいてほしい

Author: Aica
last update publish date: 2026-10-29 19:00:59

【一弥side】

「おい! どうなんだ!  杏華は大丈夫なのか! 子供に影響はないだろうな!  無事杏華も子供たちも助かるんだよな!」

「一弥落ち着け! 大丈夫だ!  杏華さんも子供も心配はない!」

「ホントだろうな! こんなにぐったりしているのにホントに大丈夫なんだな !? 日本でも有数の医者のお前が誤診なんてしてみろ!  一生お前を医者の道に戻れないようにしてやるからな!」

俺は同級生で昔から仲のいい、うちの家の専属医で日本でも有数の名医でもある友人の羽山恭介を自宅に呼びつけ杏華を緊急で診てもらう。

「そう言ってるだろ。杏華さんは連日の緊張と疲れ、それに栄養不足による一時的な貧血と軽い脱水症状だ」

「それは杏華は助かるんだよな!  お腹の子供の命はどうなるんだ!」

「双子の子供も心配はない!  但し今後は絶対に無理をさせるな! 彼女が嫌がってもお前がついているなら絶対無理させないようにしてやれ

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    【一弥side】「おい! どうなんだ! 杏華は大丈夫なのか! 子供に影響はないだろうな! 無事杏華も子供たちも助かるんだよな!」「一弥落ち着け! 大丈夫だ! 杏華さんも子供も心配はない!」「ホントだろうな! こんなにぐったりしているのにホントに大丈夫なんだな !? 日本でも有数の医者のお前が誤診なんてしてみろ! 一生お前を医者の道に戻れないようにしてやるからな!」俺は同級生で昔から仲のいい、うちの家の専属医で日本でも有数の名医でもある友人の羽山恭介を自宅に呼びつけ杏華を緊急で診てもらう。「そう言ってるだろ。杏華さんは連日の緊張と疲れ、それに栄養不足による一時的な貧血と軽い脱水症状だ」「それは杏華は助かるんだよな! お腹の子供の命はどうなるんだ!」「双子の子供も心配はない! 但し今後は絶対に無理をさせるな! 彼女が嫌がってもお前がついているなら絶対無理させないようにしてやれ!」俺が必死に確認すると、恭介は俺を抑え込むように医師としての言葉を力強く返す。「……わかった」「はぁ~一弥。心配するのはわかるが、とりあえず落ち着け。忙しい中、俺をわざわざ自宅に呼びつけるなんてお前くらいだぞ。たまたま今時間が空いてたから良かったものの──」「……わかってる。助かった。杏華や子供に何かあると思ったらどうしていいかわからなくなって──」「ハハッ。あの天下の桐生一弥がそんな弱気になるときが来るなんてな。しかも、あんなに冷たくしていた別れた奥さんに対して、今じゃこんな溺愛しているとか、昔のお前からは信じられないよ」「溺愛……? あぁ……今の俺はそういうやつになるのか──」俺の部屋のベッドで寝かせ、静かに今は眠っている杏華を見つめながら呟く。「いや、それ以外ないだろ……」「そうか。こういうやつが溺愛ってやつか──。ハハ。案外悪くないな──」「えっ? お前マジ血でも入れ替わった? 別人

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    【杏華side】「杏華さん! おはようございます! 今日も一緒ですごく嬉しいです! またよろしくお願いします!」彼との甘い朝食の時間を過ごしたあと、レイくんとの二日目の現場にやってきた。レイくんは今日も子犬のように可愛い笑顔で尻尾を振って可愛く挨拶してくる。「こちらこそ。今日もよろしくお願いしますね」そして私も笑顔でそんな彼に応える。それから衣装に着替え、スタッフさんから今日のテーマの撮影の説明を受け、撮影が始まる。今日はレイくんの次の仕事が控えている夕方までに、三本の撮影をこなさなければならないスケジュール。だけどそんなときに限ってカメラや機材の調子が悪かったり、運ばれてくる衣装が渋滞に巻き込まれてまだ届いてなかったりと、ちょっとしたアクシデントがいくつか重なってしまう。機材のアクシデントを待つ間に熱い照明の中、季節外れの衣装を着込み、ただ待機する時間や、いざというときのために、今ある衣装でとりあえず数だけこなす撮影を続けていく。いつも以上に時間と勝負のような状況が一日中続き、忙しさと疲れで、私はお昼を食べることも出来なかった。唯一救われたのは、一緒に撮影しているレイくんが、そんな状況でも一緒に過ごしてくれ明るくその場を盛り上げて癒してくれたことで、私はその疲れを大きく感じることもなく、なんとか撮影を続けることが出来ていた。だけど、そんな時だった。三本目の撮影をしているとき、照明が眩しく感じ、少し眩暈を感じたような感覚に襲われ、ふらっとしてしまう。「杏華さん? 大丈夫ですか?」少し足元がおぼつかなくなったことに、隣にいたレイくんが気づき声をかけてくれる。「あっ、うん。大丈夫。ちょっと照明が眩しく感じちゃっただけ」「照明、ですか?」レイくんは少し不思議そうに反応する。そしてしばらくすると、目の前が少し霞んでくる。あれ、おかしいな。

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    あぁ……どうして私はいつもこうなんだろう。こうやって私は今まで彼をずっと困らせてしまっていたのかもしれない。だけど、今まではホントはずっと我慢して堪えていた。どんなに辛くて寂しくて悲しい理不尽なことがあっても、私は彼と結婚していたときは、一度も彼の前では泣いたことはなかった──。だけど……、彼が私に優しくしてくれるたび、嬉しい言葉をかけてくれるたび、私はこうやって堪えきれず想いが溢れて涙を流してしまう。辛いことはどれだけでも耐えられたのに、幸せなことは、ほんの些細なことでも耐えられなくなってしまう。それほど私はこんな幸せも喜びも今まで一度も経験したことがなかったから──。どうしよう。彼を困らせるとわかってるのに、涙が止まらない。さっきは幸せで涙が溢れていたのに、今はこんな自分が情けなくて涙を止めることが出来なかった。黙って席を立った彼の顔が、そのときどんな表情をしていたのか、私は怖くてそれ以上彼を見ることが出来なかった。私は涙を流しながら、そのまま俯いて必死に涙を堪えようとしていると──。後ろから、ギュッと彼に抱き締められた──。「──杏華。すまない……」「……え。一弥……さん……?」私は何が起きているのかわからないまま、言葉を返す。「俺が……不甲斐なかったばっかりに、今までお前にはこんな当たり前の幸せもしてやれなかった……。ホントに俺は、大バカ者だ……」私を抱き締めながら、彼は絞り出すような声で、辛そうに呟く。私は、そんな彼の言葉とぬくもりに驚きつつも、また嬉しくて涙が溢れてしまう。すると、俯いていた私の頬に流れた涙を、一弥さんが指でそっと拭う。それに気づいて顔を上げると、至近距離で一弥さんが横から私の顔を覗き込んでいた。お互いの顔が、数センチほどしか離れていないその距離で、心配そうに見つめる彼に、また私の心臓は激しく高鳴る。「杏華……。お前は、これほど、どれだけ寂しい想いをして、辛い想いをしていたん

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    翌朝。いつも以上に目が早く覚めた。ちゃんと寝れたような寝れてないようなフワフワしたような感覚。こんなに朝が楽しみな日が来るなんて、いつぶりだろう……。今までは期待するだけ期待しても裏切られた毎日。同じ家に住んでいても、ほぼ顔を合わせることがなくて、朝を迎えることに嬉しさなんて感じることもなかった。広いリビングで、一人で食べる寂しい朝食。かろうじて、そこに現れた彼は、一緒に朝食を食べるはずもなく、忙しく家を出て行く背中を、ただ寂しく見つめていただけ──。そんな記憶しかない私たちが、本当に向き合って同じテーブルで朝食を食べることが出来るのだろうかと、今でもまだ半信半疑になってしまう。彼が優しくしてくれるたび、私に想いを向けてくれるたび、今までとあまりにも違いすぎて、これは夢の中で、いつかまた元の現実に戻ってしまうんじゃないのかと、ホントは毎朝不安になるほどなのに──。目が覚めてほしくないような、目を覚ましたいような、そんな気持ちが、ゆらゆら揺れ動く。だけど早く起きてしまったことで、私はそれがまだ夢の中なのかもわからないまま、彼と初めて過ごす朝食の時間に向けて、メイクやヘアセットをいつもの朝より入念にし、その時間を待った。彼に伝えられた時間になり、私は彼の部屋のドアの前に立つ。改めてそんな時間を過ごすと思うと、朝からこの心臓もうるさくなって、私は胸を手で抑え、深呼吸をゆっくりして落ち着かせる。そして、インターホンを鳴らすと、一弥さんがドアを開け顔を見せた。私の顔を確認すると、明るい表情になり、じっと私を見つめる。「おはよう──」私は彼を見ながら、小さく呟く。「おはよう。杏華──」彼は私をそのまま見つめながら、優しい声で微笑む。その言葉を聞いた瞬間、私は嬉しくて思わず俯きながら、その喜びを噛み締める。彼と、『おはよう』を言い合える日が来るなんて──。しかも、それは、こんなもに穏やかで柔らかい──

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    【プロローグ】 初恋は実らないものだ、と人はよく口にする。 私はそれを信じず、初恋の人と結婚した。 結婚三周年記念日。 私は妊娠をした身で、ミシュランに引けを取らないほどのご馳走を並べ、彼の帰りを待っていた。 すると彼から一本のメッセージが届き、ある高級レストランの住所だけが記されていた。貸し切りだと。 ついに彼も気が回るようになったか、サプライズを用意してくれたのかと思った。 ドアを開けた先にあったのは、私の妹・綾乃の誕生日会だった。 その瞬間、私はすべてを悟った。 自分だけが幸せだと思い込んでいたこの結婚は、最初から最後まで私ひとりだけの独り舞台だった。 私はあの子の影

  • 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!   第4話 壊れる身体と心

    「お姉ちゃん、どうしてあんなことしてバレないと思ってるんだろ」 え……、あんなこと……? バレる……? なんの話……? 「まさか、あいつが俺の知らないところで、男漁りしてるなんて心底見損なったよ」 男漁り……? さっきも、それ言ってたけど……どういうこと……? 「お姉ちゃん、もうそれ病気なの……。一人の男性では満足出来なくて、常に自分の欲望を満たしてくれる男性を探し求めてるの」 ちょっと待って……! あまりにも身に覚えのない酷い綾乃の嘘に私は驚いて言葉を失くす。 「俺もまんまと騙されたよ。まさかずっと清純なフリをしてたなんてな」 酷い……! 一弥さんもどうしてその言葉を信じるの…

  • 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!   第5話 愛が終わるとき

    目を覚ました瞬間、強い戸惑いに包まれ、次いで記憶が断片的に一気に押し寄せてくる。 気付けば無意識のうちに私は下腹部をかばっており、鈍い痛みが走った。 そのとき、そばにいた一弥さんの姉の真琴さんが私が目を覚ましたことに気付き、慌てて駆け寄る。 真琴さんは私の手をぎゅっと握り締め、声を震わせながら言った。 「よかった……やっと目を覚ましたのね。お医者さんが言ってたの。急激な精神的ショックと、長期間の心身の抑圧が原因で、切迫流産の状態だって。今は安静が必要よ。……ねぇ、どうして妊娠していること私に言ってくれなかったの?」 「どうして、私は病院にいるの? どうして真琴さんがここにいるの?」

  • 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!   第2話 別れのカウントダウン

    「わあ、すごく綺麗なお花!」 綾乃は、私の腕の中に抱えられた花束を、目を輝かせて見つめた。 私は反射的に花束を抱き寄せる。 「この花は……」 言い終える前に、すらりとした長い手が、私の腕の中から花束を奪い取った。 呆然と顔を上げると、そこには桐生一弥の、感情の揺らぎひとつない瞳があった。 彼は、私が心を込めて選んだ――純潔な愛を象徴する白いバラの花束を手にすると、そのまま自然な動作で振り返り、綾乃の前に差し出した。 「誕生日おめでとう、綾乃」 低い声だったが、突然静まり返った個室の中には、はっきりと響き渡った。 綾乃は驚きと喜びの入り混じった表情で花束を受け取り、顔を花びらに

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